黒部第三ダム建設時に工事用資材を運搬するために掘削されたトンネル。
摂氏166度に達する高熱の岩盤を掘削して建設されたこのトンネルは「高熱隧道」と呼ばれ、工事に従事した作業員の中から多くの死者を出した。
雪崩の犠牲者も含めた全工区の犠牲者は300人余りで、同時期に完成した丹那トンネル工事の犠牲者を大きく上回った。犠牲者は黒部市宇奈月町内山に葬られている。
と言うトンネル工事のドキュメンタリー小説です。作者は実録小説の大家、吉村昭先生。
黒四ダムにおける自然との戦いは映画黒部の太陽でも有名ですよね。
でもこの黒三ダムの悲惨さは記録映画としてひっそりと残されていますが、どちらかと言うと当時の日本の恥部的な位置づけなんだと思います。
理由は大量の犠牲者が出ても工事進行を最優先せざるを得なかった国の方針。一言で言うと電力不足の解消ですね。
実際富山県警は工事中止命令を出していますが、その命令は反故にされ工事は続けられる事になり、更に犠牲者を増やします。
たしかに当時では破格の日当を支払っているとは言え、この本を読み進むにつれ何とも言えない遣る瀬無さが募ります。
特に100度を超える岩盤に穴を開けダイナマイトを仕込む担当が次々に悲惨な最期を遂げるシーンは読んでいて目を背けたくなります。
後半の雪崩被害の描写と、最期のラストシーン。
吉村昭先生、貴方は凄いです。 この小説の取材執筆は大変お辛い仕事であった事は想像に難くないです。
簡単にはおススメ出来ませんが、読み応えあり。
評点9